top of page

『よく行く銭湯の話。』

執筆者の写真: 龍之介龍之介

俺がよく行く銭湯では


敬老の日、母の日、父の日、などの

行事の時期になると


絵馬みたいな手のひらサイズの木の札に、

恋人や家族に向けて、メッセージを書き


書いた木札を

湯船にぷかぷかと浮かべるという

イベントがある。







あれは確か

バレンタインデーの時期だった。



その日も、

メッセージが書かれた木札が30個くらいぷかぷかと湯船に浮かんでいた。





俺は、

木札が浮かんでいる湯船に入るために



念入りに体を洗う。





体についた雑念を洗い落とし、清くなった体で


言葉の念が渦巻く熱湯の中へ入る。





冷えた体に念入りのお湯が染みる。






(気持ちいい〜

俺は幸せや念〜)







時の流れがゆっくり感じる。




ゆらゆら〜




ぷかぷか〜






綺麗に洗った体に

名前も知らない者たちの念の籠った木札が

吸い寄せられてくる。





ぷかぷか〜




目の前に漂流した

木札を手に取る。





パパ大好き!

ママ大好き!


と書かれている。





微笑ましい。





たまに、天国にいる家族に向けて書かれているものや、

家族への謝罪の言葉が書かれた木札も見かけたこともある。

悪口もある。




これが、結構面白い。




一つの念を拾い見

お湯にリバース。



そんなことを繰り返していると、





(な、なんだこれは!?!?)




背筋が凍った






なぜなら、手にした木札が

真っ黒いペンで乱雑に

塗りつぶされていたからだ。






これは、一体、、、





恋に打ちひしがれた女の子の

怨念なのか?




芸能人の書き慣れすぎが原因による、全く読めないサインにも見える。




、 、 、 、 、





なんなんだ、、これは、、?




もしや、、




💡"







(傑作だ!)






俺には伝わったぞ。





きっと、これは、



まだペンも充分に握れない者が

この世に生み出した

精一杯のアンパンマンだろう。






(素敵だ。)




俺には伝わったぞ。





。。。。。。。。







念入り風呂を上がり

サウナに入る。



数人の先客。



おじさんが独り言を呟く。




「熱いですねー。いやー熱い。熱いなー。」



「………???」







そこにいる誰もが認識できた声量の

おじさんの言葉は、



おじさんが熱気に耐えるための呪文として

片付けられ、

熱い空気の中に蒸発していった。






しかし、俺には伝わったぞ。


(わかるよ。熱いよなー。サウナだもん。)








熱い空気に耐えられなくなり

サウナから出る。



キンキンに冷えた水風呂に浸かり



天国へと続く扉を開けると、




ひんやりとした風と、田舎の星空。

先ほどの呪文おじさんもいない。

貸切だ。




笑をこぼしながら、座椅子に寝転がる。




体にまとわりついた

おじさんの呪文と

人々の念たちが、

自分の体から湯気となり、

天へと召されていく。





(気持ちいいーーー)





しばらくの間

星空を眺める。





(流れ星来い。今きたらなんでもうまくいくよー。

3.2.1はい!)


と、心の内で、つぶやき

空に念を送る。





しかし、流れ星は流れない。

待てど待てど。

一向に現れる気配もない。








どうしたものか。







俺の念は届きやしない。






言葉にしようとせず体内をただ循環させているだけの自分の念は、誰にも気づかれずに、星空に、消えていく。






この世に言葉として存在しない俺の念は、

なりそこないのアンパンマンやおじさんの呪文のように

誰にも伝わらない。







伝える努力ああああああああああああああ!!!







どうも、龍之介です。



2025年、精一杯頑張ります。

目標は映画に出たいです!!!!!!!

よろしくお願い致します!!!!!!





最近見た映画

『僕らの世界が交わるまで』

ジェシーアイゼンバーグ監督

面白かった。人間らしくて面白かった。人間の醜いところが面白かった。




 
 
 

תגובות


bottom of page